第37章 心の傷
帰り道、大きな風呂敷を手に持つ善逸。
背中には刀を入れてる為に背負えない。
光希は一回り小さい風呂敷を背負う。
お互い手が塞がっているので繋ぐことは出来ないが、並んで歩いている。
「あのさ……」
「なに」
「俺のためにってのはわかるんだけどさ」
「なによ」
「もうそろそろ泣き止んでくれませんかねぇ」
「うっさい……」
まだ泣きやまない光希。
泣き虫大王の善逸に呆れられる始末である。
「何か、俺が泣かしてるみたいじゃん」
「そうよ!」
「すれ違う人の目が怖えよ……」
「人通りが少なくて良かったね!」
気の強さは戻ったが、涙がだけが止まらない。
光希は時折、感情のコントロールが効かなくなることがある。
感情を抑えている戦闘中は大丈夫なのだが、無意識的に常に頭を使っている彼女は、頭が回らなくなると途端にポンコツになる。
これがその反動だ。
もう既に何が悲しくて涙が出ているのかもわからない。脳からのシステムエラーとしか思えない。
「脱水になるぞ……」
「うるさい…馬鹿っ……ううっ…」
「はぁ……困ったな」
とりあえず夜になってしまったので、隠れ家に帰る事にした。蝶屋敷には明日戻ることにする。
隠れ家までもう少し。
ぽろぽろと涙を流しながら光希は歩く。
「涙の止め方、知らないの?泣き虫に関しては善逸に並ぶ者は居ないでしょ」
「そうだなぁ……」
隣を歩く善逸が思案する。