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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第37章 心の傷


とりあえず光希は店が閉まる前に呉服屋さんに行き、預けてあった荷物を取りに行く。
大きめの風呂敷を二つ、一つは背負って、一つは抱えて戻ってくる。

戻るとき、小さく善逸の歌が聞こえた。


思わず足が止まる。

可愛らしい童謡が聞こえている。
正確な音で、単純な歌であっても巧いとすぐにわかる。外だから声を抑えているが、優しい歌声だ。


何曲か歌った後に、少し途切れる。


――そして次に聞こえてきた歌



 待ちましょう 待ちましょう
 あなたがここに帰るまで

 待ちましょう 待ちましょう
 いつまでも

 いつか 夢みた場所へ 行く日まで
 あなたのことを 待ちましょう……



林の中に身を隠し、荷物を抱えてしゃがみこみ、光希は必死に涙を堪える。

この距離なら確実に善逸は光希に気が付いてる。泣いちゃ駄目だ。


「……っ、くっ…」


声を殺そうとするが、どうしても涙と共に出てしまう。


――何年経ったって、何十年経ったって、……消えるわけないだろう……



「……ううっ、…くっ、……っ」


――親子連れとすれ違っただけで号泣してたお前が……



「ううっ、……ひっ、……ふっ、ぎっ…」


――宿の門に立って、ずっと両親の迎えを待ってたお前が……



「……はっ、……くっ…」



――大丈夫なわけ、ないだろう……


「……なのに。なんつー綺麗な声で……、歌うんだよ、善逸……」




 待ちましょう 待ちましょう
 あなたがここに帰るまで

 待ちましょう 待ちましょう
 いつまでも


 いつか
 夢みた場所へ 行く日まで


 あなたのことを
 待ちましょう……





子どもに聞かせているのか、自分に聞かせているのか……それは善逸本人にしかわからない。


宿に泊まった誰かが歌っていたその歌。

優しい旋律が気に入って、意味などあまり考えないままに二人でよく歌った。


繰り返されるその歌を聞きながら、光希は涙を流し続ける。




空は夕焼けで綺麗に染まっていた。

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