第37章 心の傷
「私も、一緒に待つ」
「光希……」
光希は目を閉じて、ひと呼吸つく。
目を開けると、にこりと笑った。
子どもの前で膝をつき、泣きじゃくる子どもの背をさする。
「お昼ご飯、食べた?」
「……食べてない」
「じゃあ、何か買ってきてあげる。持って帰れるものか……お団子とか好き?」
「お団子っ?!」
「食べたこと、ないの?」
子どもは何度も頷く。
涙が止まったので、善逸が笑う。
「じゃあ、買ってくるね」
「光希、悪いな」
「ちっとも!私も食べたいの」
光希は笑ってそう言うと、街へ駆けていく。
「あのお姉ちゃん、すっごい美人……」
「俺の女」
「うっそだぁ……」
「お前……こんにゃろっ!」
そう言いながら、男の子は善逸から離れない。
少しすると光希がお団子を買って戻ってくる。
「多くね?」
「全種類買った!」
みたらし、きなこ、ごま、あんこ、醤油、三色団子をそれぞれ二本ずつ。
目の前に並べられたお団子に、興奮する男の子。
「好きなのを、好きなだけどうぞ」
「いいの?」
「もちろん。お茶も飲んでね。コンコンなっちゃうよ」
男の子の側に水筒も置いてやる。
三色団子を選んだ男の子は、善逸と光希の間で嬉しそうに食べる。
「兄ちゃんと、姉ちゃんは食べないの?」
「お前が腹一杯になったら食うよ」
「まずは君が食べな」
「ありがと……」
男の子は相当お腹が空いていたようで、団子をもりもり食べていく。
時間が過ぎていく。この子と親が離れたのが昼過ぎ。そこから二刻弱……
こんな小さい子を置いて離れるには長すぎる。
密かに焦る光希。
この子はやっぱり……
考えたくはない。
が、もしそうなら、善逸は耐えられるのか?
子どもに笑いかける善逸をみて、とてつもない不安にかられた。