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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第36章 準備


「はいっ」

光希は水色の財布を善逸に渡す。家用の財布だ。


「ん?隠れ家から持ってきてたの?」
「そう。ここから先はそこから出して。支払いは任せたよ」

支払いは男にさせる、という事だろう。男を立てる光希らしい行動だ。といっても、中身は光希の金なのだが……


「俺だってちゃんと金あるよ?」
「知ってるよ。でも、そのお金は大事にとっときなさい。今使っちゃ駄目。将来の為にね」
「……どういうこと?」
「いいの。とにかく、今日はここらからね!」


光希は善逸に強く言う。

まるで、善逸に将来があって自分にはないと言うかのような発言にゾクッとしたが、どうせ言っても躱されるだけなので、善逸は大人しく財布をしまう。


「腹減った」
「……そうね」
「減らねえか……」
「お団子ならいける」
「それは飯じゃねえ」


とりあえず、消化のいいうどんにする。


「前もうどんだったね」
「そうだな」
「うどん好きだよね」
「まあ、そうだな。蕎麦のが好きだけど」
「じゃあ、蕎麦にすればいいのに」
「うどんの方が胃に優しいだろ」
「つまり、善逸は私に優しいということね」
「当たり前だ」


光希は半分しか食べないので、善逸は一人前半食べるが、ぺろりと完食する。


「まだ食えるな」
「凄いなぁ」
「俺、大きくなるかな」
「なるよ」


善逸は、呉服屋の店主に「小さめのはどこだったかな……」と服を探されたことを気にしているようだ。


「……俺、早く大人になるからね」
「ん?どしたの」

善逸が光希の手の上に自分の手を乗せて言う。


「なんでもないよ。行こっか」
「うん」


二人は店を出て、休憩用の丸太に座る。椅子の下に刀を隠す。


「背中、しんどい?」
「ちょっとな」
「やっぱり所々休憩入れたほうがいいね」
「そうだな。まあなくてもいけるけど」
「いや、身体を痛めながらじゃ駄目。身体がしんどいと心がのびのびとしない」


光希は周りを見て、休憩出来そうなところを探してメモをとっていく。

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