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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第36章 準備


夕方になり、伊之助は任務に行き、光希と善逸は共に食事をとる。

光希はお粥ではなくなったが、量はだいぶ少ない。それでも、膳をみたまま固まる光希。


「……食えよ?」
「なあ、半分……」
「駄目だ。早く元気になりたいんだろ」

「……食えば治るってもんでもないだろ」
「でも、食わなきゃ治らない」
「うう……半分!半分なら頑張る」
「既に俺の半分だろ」

光希は善逸の手をぎゅっと握って上目遣いで見る。

「お願い。善逸。半分食べて……こんなの無理ぃ……」

涙を浮かべて見せる。
顔を赤くして、のけぞる善逸。


「そ、そうはいくかっ!可愛い顔しても駄目だ!」
「どうしても……駄目?」
「駄目!」
「私、頼れるの、善逸しかいないのに……」
「……駄目っ!」

「炭治郎なら食べてくれるのに」
「今は居ないし、この状況なら食べないよ、あいつも!」
「いや、食べてくれるもん、炭治郎なら。伊之助も食べてくれる!」
「あいつらはお前を甘やかし過ぎなんだよ!」

「甘やかし過ぎ……なるほど」

お膳を持って光希が立ち上がる。


「もう一人居た。俺を甘やかしてくれる奴が」
「は?」
「カナヲだ。カナヲなら食べてくれる。カナヲと食ってくるわ。じゃな」

部屋を出ていこうとする光希。


「ちょっ、ちょっと待て!……わかった。食うよ、俺が食ってやるから!ここに居ろ!」
「早くそう言えばいいのに」

にこりと笑う少女。


「……はぁ、駄目だ、勝てない」

善逸が溜息をつく。光希はおかずをひょいひょいと善逸のお椀に移していく。


「もう一息だったな」
「どこから計略だった?」
「言うはずないだろ」
「くそ……あ、入れ過ぎだ!半分だけだぞ!油断ならねえやっちゃな」


善逸はがんもどきを一つ光希のお椀に戻す。

二人は手を合わせて「いただきます」と食べ始める。


「炭治郎、いつ帰ってくるのかな」
「さあな。お前の会いたい人番付三位か……なんか用あんのか?」
「ある。二つ……いや三つ程な」
「そんなに?」
「お前の協力も必要だ。よろしくな」
「? おう」


「いいかげん腹括れよ、……炭治郎」


光希が味噌汁を啜りながら不敵な笑みを浮かべたので、善逸は恐れおののいた。

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