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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第34章 伊之助


「あ。お前、俺に何か用があったんじゃねえの?」

伊之助が光希に聞く。


「ああ、……うん。あのさ…、伊之助」
「なんだ?」
「ごめんっ!」
「……?」

少し言い淀んでいた光希が、いきなり深く頭を下げる。

伊之助も驚く。


「どんぐり、壊しちゃった」
「どんぐり?」
「前にもらった、ツヤツヤのどんぐり」
「ああ、あれか」

光希は童磨との戦いで、切り札のどんぐりを使い、握りつぶされたことを話した。


「ずっと伊之助のどんぐりを持ち歩いてるのは知ってたけど。毒仕込んでたのか……確かに少し大きめのどんぐりだったけど……」
「恐ろしい女だな、お前……」

男子二人はドン引きしていたが、少女はお構いなしだ。


「凄いきれいなどんぐりだったから、めちゃめちゃ気をつけて細工したんだ俺は。胡蝶さんに藤の花の毒をわけてもらって針と一緒に入れといたんだ」

光希は、はぁー……と溜息をつく。


「気に入ってたから、大事に持ってたんだけど。ごめんなさい」

眉を寄せて、また頭を下げる。


「気にすんなよ」
「伊之助……」
「役にたったんだろ?」
「ああ。あれがなかったら俺は今、生きてない」
「じゃあ、いいんだ」

「怒ってないのか?」
「怒らねえよ。大事にしてくれてありがとな」
「うん……」

それでも、寂しそうな顔をして俯く光希。


「……欲しいなら、また、やるから」


伊之助が照れくさそうにそう言う。
光希は顔を上げる。



「本当か?」
「ああ、見つけて持ってきてやるよ。だから、そんな悲しそうな顔すんな!」

光希の頭にぽんと手を起きながら、伊之助はにいっと笑う。


「ありがとう!伊之助!」
「おう!」
「また毒入れるのかよ?」
「そうだな……、いや俺は二番煎じはしない。また違う手を考えるさ。ははは」

光希は楽しそうな顔をして笑う。



「……俺、お前の持ち物に迂闊に触らねえようにするよ」


善逸はそう言って冷汗を流した。

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