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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第34章 伊之助


昼過ぎに、蝶屋敷の門をくぐる。

「お邪魔いたします」

光希が声をかけるとアオイが駆けてくる。


「光希さん!熱、酷かったんですってね!大丈夫ですか?」
「アオイさん、心配かけてごめんなさい。もう下りましたよ」

アオイは光希の額に手をあてる。


「……まだ熱いですよ?」
「す、少しでしょ?歩いてきたから、です」
「アオイちゃん、嘘だからね。こいつ、無理してる。すぐ寝かそう」
「ですね」


部屋へ連れて行かれる光希。


「ちぇ……」
「舌打ちしないの!」


隊服から入院着に着替えてベッドに座る光希を、善逸が注意する。

自分の額に手を当てる。

「……わからん」
「どれ」

善逸がおでこをくっつける。反射的にきゅっと目を閉じる光希。


「……熱いよ」

顎をくいと持ち上げられて、口を塞がれる。
頬を両手で包みこまれ、舌で唇を割られ、酸素を求めて口を開けた時に舌をねじこまれる。

善逸の舌が光希の舌を絡めとる。
頭が痺れてくる。


善逸が口を離すと、呼吸を荒くした光希の口の端から唾液がこぼれた。


「はぁ……はぁ、何すんの」
「はは、ごめん。可愛くて、つい。やっと建物に入れたし。ね?」
「熱がまだあるなら、移るかもしれないだろ。俺が死にかけたの見てなかったのか」

善逸は手拭いで光希の口を拭き、「移るならもう移ってるよ。お前が寝てるときにしたから」
と悪戯っぽく笑った。


「伊之助、居るか見てきてやるよ」

善逸はそう言って、顔を赤くする光希を置いて部屋を出ていく。

部屋を出て扉を閉めた瞬間、はぁー…と大きく息を吐き出し、顔を真っ赤にして口に手を当てる。


……あっぶねぇ、暴走しかけた。まじで危ねえわ。よく止まれたよ俺。つか、駄目だわあの距離で目ぇ閉じられたら。あれに耐えられる男、存在するの?無理っしょ?


とりあえず気持ちを落ち着ける為にも、伊之助を探しにいくことにした。



部屋に残された光希も口に手を当てていた。


……頭が痺れて、力が入らなかった。あいつ、口付けの腕あげやがった。剣の腕あげろよ、全く!
ていうか、本当に義勇さん家でもしてたなら、説教だぞ!



こちらも、必死に高鳴り続けている鼓動を抑えようとしていた。

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