第33章 恋人として

「変に気を回さないでよ。俺、気にしないよ。ちゃんと、追いかけるから」
「わかった」

「俺は、光希とは横並びでいたい。仕事でも、……家庭でも。だって俺の後ろを歩かれたらさ、可愛い光希が見れないじゃん」
「善逸……」

「女将さんみたいにならなくていいんだよ。いつか俺が、お前の……旦那になっても」


ものすごくこっぱずかしい事を言って、善逸は顔を赤らめる。
照れくさそうに顔をそらす。


「でも、……私は意外と三つ指つきたい方かも」
「え？そうなの？」
「わかんない。その立場になってみないと」
「まあ、お前がやりたいようにしろよ」

「じゃあ、私がいつか、善逸の……お嫁さんになった時のお楽しみ、だね！えへへ」


嬉しそうに光希が笑う。
善逸はその可愛らしさに、密かに悶えたおす。



「……そうやって期待させといて、鬼嫁になるんだろどうせ」
「いい読みだね」
「俺は尻に敷かれるんだ」
「給料運んでくるだけの旦那かな」

「それでも、俺はお前と一緒に居たいと思うよ。どうかしてるよな」
「うん、どうかしてる。考え直すなら今だよ」

「考えても、答えは変らないな」
「考えてないんじゃないの？」
「そうかも」
「考えなさい」

「お前は考えるなよ。妙に賢いからな。気が変わっちゃうかも」
「そうね。あんまり考えないようにするよ」
「おい……気が変わる可能性あんのかよ…怖っ」
「あはは」


愛を真っすぐにぶつける善逸。
どうしても変化球になりがちの光希。

似ているようで正反対の二人。
でも、正反対のようでどこか似ている。



話しながら歩いていると、見えてくる蝶屋敷。

「倒れずに歩けたな。偉いぞ」
「特効薬持参で歩いてるからね」
「林の中で、愛を注入したしな」
「あれは、どうかと思う……」


二人は繋いでいた手を離す。


「伊之助、いるかな」
「お前の会いたい人番付の二位か」
「うん。三位は炭治郎」

「一位は冨岡さんだったよね。俺、いつ出てくんのさ……」
「善逸？善逸は……」

光希はニヤッと笑う。


「殿堂入りだから、番付に入ってない」



光希の変化球が、また善逸の心を打ち抜いたのだった。