第33章 恋人として
光希に水を飲ませて、熱を確認し、嫌がる彼女を強引に背負う。
「足、大丈夫なの?」
「大丈夫」
仕方なく、善逸の背中に身体を預ける。
久しぶりに乗る幼馴染の背中は、逞しくなっていた。
「凄いなぁ……」
「何が?」
「いや…男の子だなぁってね」
「男の子ですよー」
抜け道を出るところまで背負ってもらい、ゆっくりおろされる。
ここからは街道を行くので、光希がおんぶを嫌がった。
「歩けるか?」
「大丈夫だよ」
「よし、頑張ろう」
「はは、兄ちゃんみたい」
「兄ちゃんじゃないでしょ」
善逸が光希の手を握る。
「……残念ですが、ここではまだ兄ちゃんです。屋敷に近すぎます。可愛い恋人になるのはもう少し待って」
そう言いながらも、繋がれた手を振り払うことをしない。
「とりあえず、兄ちゃんに甘えるわ」
「おー」
街道を、仲良し兄弟で歩く。