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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第33章 恋人として


翌朝、光希の熱はほとんど下がった。
千代も喜んでくれた。

朝、仕事にいく義勇を見送って、善逸と二人で蝶屋敷へ出発する。


「母ちゃん、行ってくるね。沢山お世話してくれてありがとう」
「無理しちゃだめよ。ぶり返すからね」
「うん。気をつける。今日はもうあがって。明日も休んでね」
「ありがとう」

「お邪魔しました」
「善逸くんも、ありがとうね。助かったわ。光希をよろしくね」
「はい」


光希は千代にぎゅっと抱きついて、頭を撫でてもらう。
善逸は千代にぺこりと頭を下げた。


屋敷を出た二人は、抜け道へと向かう。


「善逸も意地っ張りだよな」
「え?」
「母ちゃんによしよしして欲しかったくせに」
「……男だぞ。俺は。母ちゃんにそんなに甘えてられっかよ」

善逸は照れくさそうに目を反らす。


「お前……、可愛いなあ」
「お、男に可愛いとか言うなっ!」
「女で良かった、俺。ずっと母ちゃんに甘えよっ!」

笑いながら先を歩く光希。
体力が落ちてるから速くは歩けない。善逸も足が完治していないので、ゆっくりついていく。


「ここから行くんだ」

竹やぶではない道だ。

鍛錬の道ほど険しくないが、舗装はされていないので、歩きにくい。
でも、その分生活道になっておらず人が居ない。

よろよろと進む光希。


「大丈夫かよ?」

善逸が近寄ると、光希は少し熱が上がってきたのか息が荒い。

「おんぶしようか」
「いいよ。お前、足痛いだろ」
「大丈夫だよ」
「大丈夫じゃねえよ」

光希はどんどん歩いていく。


「光希、ちょっと休もう」
「あと少しだから」
「休もう。熱が出るよ」
「いいって」
「休む!俺の足が痛いの!もう歩けない!お願い!」

善逸は、手頃な石に座り込む。


「ん!」

そう言って隣の石を指差す。
光希は、はぁはぁと息を荒くしながら立っている。


「座るの!休憩!俺のための!」
「はぁ、はぁ、……ふふ、やるじゃん」


光希は笑って、石に座った。

彼女を休ませるためにどうしたらいいか善逸は考えたのだろう。
彼が咄嗟に考えたのは本当に稚拙なものだったが、光希はその気遣いが嬉しくて少し泣きそうになった。

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