第32章 師弟
「では、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
「ああ」
義勇の部屋を辞し、光希の部屋へ向かう二人。
「あのさ……」
「なに?」
「俺、この先もここで義勇さんと寝ることなんて沢山あるんだぞ。今までもずっとそうやってきたんだし。いちいち気にされたら俺も……辛い」
「ごめん」
「わからなくもないけどさ、そこは俺を信じてくれよ。今回はお前に肩入れしたけど、もうしないからな」
「うん……」
善逸は、ヤキモチを焼いて強引に意見を通してしまったことを少し反省する。
「女大好きで浮気症のお前も、女だらけの蝶屋敷で寝てる訳だし」
「お前、少しはそういうの気になる?」
「全く」
「気にしろよ!多少は!」
「……いや、ないな」
「愛が足りないな……」
光希の部屋の前につく。
「じゃな、また明日。おやすみ、善逸」
「おやすみ」
光希は布団に入る。
身体は回復してきたが、とても疲れていた。
……まさか義勇さんが刀を抜くとはな
光希は何かあると思っていたが、善逸に刃が向かったとき、心底恐怖を感じた。
自分に刃が向くよりずっと。
そして、あの時、驚いて思考を止めた善逸。
それがまた恐ろしかった。このままだとやばい。こんなんじゃあいつは任務で死ぬ。
考える癖をつけさせないと……どうしたらいいかな……
そう思いながら、光希は眠りについた。