第32章 師弟
夕方頃、光希と義勇は目を覚ました。
善逸は稽古場で、足に負担がかからない鍛錬をしていた。光希はそれを知って明日は大雨だと驚く。
「失礼なやっちゃなぁ!俺だって鍛錬するわ!」
「いや、信じられない。怖い。お前本当に善逸か?」
「もー本当に失礼だからお前!お前が言ったんだろうが早く強くなれって!」
「だとしてもだ。俺の予測から外れてる。緊急事態だ」
稽古着の善逸が、光希と並んで歩きながら義勇の部屋に向かう。光希はゆっくりなら歩けるようなので、肩は貸していない。
善逸は光希からの失礼発言の羅列に、少し意地悪をしたくなる。
「じゃあ、お前の予測もまだまだなんじゃねえの?お前の予測より、俺の愛が上回ったってことだ」
怒られるのをわかってて、善逸はそう言って笑う。
すると、「……そうか、なるほどな。それならそこを付いてもっと鍛錬させれば……」と考えている光希。
肩透かしを食らいながら、こいつ本当に恋愛体質じゃねえのな……と苦笑いした。
「失礼いたします」
二人で義勇の部屋に入って夕餉が始まる。
「義勇さん、先程はありがとうございました。俺の為に柱の人たちと乱闘して、ひと芝居してくださり…感謝いたします」
食事の前に、光希は深々と頭を下げる。
「実弥さんと伊黒さん、納得してくれますかね」
「さあな。だが、お前の意思は伝わっただろう」
「だといいのですが……」
「光希、お喋りもいいけどちゃんと食えよ」
「完食するまで部屋から出さない」
「ううっ……」
ニ対一はきつい。
光希はゆっくりと匙でお粥をすくって口にいれていく。
「……いつから芝居だと気付いた」
「確信したのは、炭治郎たちの名前が出てきたあたり……ですかね。いくつか矛盾点が出てきたので。変だなと思ったのは、善逸を同席させた時からです」
「そんな前から……」
善逸はぞっとする。