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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第32章 師弟


「……言いません」


キレる寸前まで殺気を放っていた光希が、落ち着いた様子で座る。


「こいつらを見殺しにするのか」
「しません」


義勇と善逸を見つめる。
義勇はまだ圧を出し続けている。



「死ぬのは、俺です。善逸に向けているその刃、どうか俺に向けてください。俺が死ねば、善逸を殺す意味がなくなる。そいつはいずれ鳴柱になります。殺すのは得策ではありません」

「光希……」

「俺は、死ぬならあなたに斬られたい、義勇さん。干天の慈雨がいいなぁ」


ゆるく笑う光希。



「演技力が足りなかったか」
「いえ、なかなかでした」

義勇は刀をしまう。
後ろ手に絡められていた手が開放されて、善逸は動けるようになる。


「鴉たち、居ますか?」
「庭に居る」


義勇が障子を開けると鴉が二羽、縁側に降りてきた。不死川と伊黒の鴉だ。



光希は縁側まで這って近付き、鴉にお辞儀をする。

「ご覧の通りです。俺は上に立つ人間じゃない。大事な人を守りたいが故に、判断を容易に間違えます。そして、その大事な人たちを失うくらいなら、即、自決の道を選びます。上に立ってお役に立てるとは到底思えません。どうかお許しください」


鴉たちはそれを聞くと飛び去っていった。


「すまなかった、我妻」
「い、いえ」

義勇は懐紙で善逸の首を押さえる。
そこは刀が触れ、血が滲んでいた。

善逸は紙を受け取り、自分で押さえる。


「はぁ……こんな阿呆な作戦考えたの誰だよ。伊黒さんあたりかな……人質とか好きそうだな…揺さぶりをかけて…とかな……」


「……お前なら、お前に首を縦に振らせる作戦を思いつくのか?」
「んー、如月さんは賢いし頑固ですから、難しいですが……、ないこともないですね」
「それはどんな作戦だ」
「言うわけないでしょう!」


「我ながらいい作戦を思いついた」そう言って、光希が笑う。

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