第32章 師弟
光希に考えさせる前に義勇が動く。
一瞬のうちに日輪刀を抜き、善逸の首元にあてた。
「なっ……!」
光希は立ち上がるが、くらりと目眩を起こして片膝をつく。
「動くな!如月!!」
「……なんのつもりですか」
「お前なら、もうわかっているだろう。隊は、こいつを殺すことに決めた」
善逸は驚いてただ唖然としている。
「善逸!しっかりしろっ!ぼーっとすんなっ!頭動かせっ!!」
光希はまず善逸に声をかけた。
「隊律違反でしょう……冗談もやりすぎると笑えませんよ」
「違反の常習犯が何を言う。上層部の指示だ。違反ではない。俺が冗談を言わないのも、よくわかっているだろう」
義勇はぐっと刀を首元に近付ける。
「やめろっ!!いくら義勇さんでも許さないぞ!」
光希は義勇に、強い殺気を放った。
「こいつがいる限り、お前は上に立たない。お前がここまで体調を崩したのも、こいつのせいだ。危険極まりない。隊はお前を必要としている。だからこいつを消す」
「……何、言ってんだ?論点がめちゃくちゃだ……」
「つまり我妻善逸は、如月光希の最大の弱点だといえる」
……俺が、光希の弱点?
善逸が目を見開く。
「竈門、嘴平も状況によっては、消す。お前にとってかけがえのない仲間だろう。
鬼殺隊はこの三人をいつでも殺せると知れ。お前が隊を辞すことも許さない。
殺されたくなければ、上に立つと言え」
義勇は、光希を睨む。