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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第31章 熱


「俺は、節度を守りたいんだ。『まいっか』とかって、なし崩し的に信念を曲げるのが嫌いだ」
「わかってるよ」
「でもまあ……、お前の不安が限界にきたら、ちゃんと答えるよ。俺の信念なんて、お前を失うことに比べたら大したことないからな」

顔を拭いた手拭いを肩にかけて、にこっと笑う。


「光希……」
「でも、まだ全然その段階じゃないから。俺は信念曲げねえから。ここは師匠の家ということを、忘れんな。いちゃつきは無しだ」
「はーい……」

善逸はまた光希を抱き上げる。

「歩けるっつの」
「わかってるっつの。これしかお前触れねえんだから、やらせろよ」
「下心丸出しじゃねえか」
「俺に上の心はねえのよ」


昨日から、『お前のことを何より大切に思ってる』ということを何度も示してくれている光希。

……それだけで、俺は十分だよ

善逸は光希を見下ろしながら微笑んだ。



部屋に入る。
善逸は光希を抱えたまま下ろそうとしない。

「下ろしてくれよ」
「なんか、下ろしたくないなって……」
「俺の話聞いてた?」
「すっげえ聞いてた」
「じゃあ頭が悪いのか」
「そう」

このやろ……

光希はひゅっと呼吸を使うと、善逸の腕から飛び上がる。

「うわっ!おいっ、光希!」

光希はそのまま布団に着地、するはずが、飛んだ高さが足りずにお尻から落ちた。


「いてぇっ!!」
「おいっ、馬鹿っ!」

善逸が慌てて駆け寄る。

「いたた……」
「馬鹿っ!何してんだ!動けるわけないだろ……」
「誰のせいだよ」
「俺…かな」

「いけると思ったんだけどな……」


善逸は、お尻を擦りながら不貞腐れる光希の足が、着物から出ていることに気付く。

「……っ!」

少年は息をのみ、後退って距離を取る。

「?」
「も、もう、無茶すんなよ!わかったか!」
「何、急に怒ってんだよ。元はといえばお前が離さないから……」
「はいはいはいっ!すみませんねえ!!」
「何だ?……変な奴」


光希の頭脳は時にポンコツになる。
考えれば自分の足と善逸の行動で全て理解出来るはずなのに。


……俺はこの先もずっとこうして振り回されるんだろうな


善逸は光希に気付かれないよう溜息をついた。


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