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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第5章 蝶屋敷 1


光希は目を覚ました。

誰かに背負われている。戦闘中に気を失うとは、と焦りながら状況を確認する。

「あの……」

光希が声をかける。

「ああ、気付かれましたか、よかった」

隠が答える。

「あの、すみません。敵は……」
「鬼は討伐されましたよ。お疲れ様でした」
「そうでしたか。あ、降ろしてください。俺、自分で歩きます」
「無理ですよ、あちこち傷めてます」
「でも、ご迷惑……」
「貴方軽いから大丈夫です」

降ろしてくれない隠に少し戸惑う。

「お気遣いありがとうございます。ですが、怪我人を運ぶのも仕事ですので、お気になさらず。間もなく到着しますので、どうぞお眠りください」

そう言われて瞼を閉じる。ゆらゆら揺れる振動が心地良い。眠気が襲ってくる。

「お世話、かけます……」

誰かに背負われるなんていつぶりだろうか。
ああ、あの時だ……

夢の世界に旅立ちながら、ぼんやりと思い出していた。


十二歳のころ、風邪で熱があるのに仕事をしていた光希は、庭先で掃除をしていてそのまま倒れた。
慌てて叫ぶ善逸の汚い声で意識を取り戻し、抱き起こされ、背負われた。身体に力が入らず、光希にしては珍しくされるがままに身を委ねる。自分が熱いからか、善逸の背中が冷たく感じた。
そして、離れの寝室まで運んでくれた善逸は、光希からしっかり風邪を移されて寝込んだのだった。


隠の背中で、寝ながら光希は少しだけ笑った。


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