第5章 蝶屋敷 1
「着きましたよ」
その声で目を開ける。
草履はいつの間にか脱がされており、布団の上に降ろされる。
「いっててて……」
「ああ、ゆっくり」
「皆は……」
「別室です。あなたはその、…女性なのですね。応急処置の際に気が付きました。なので、あなただけこの部屋です」
「ご配慮感謝します。あの、皆、無事ですか?ぜん…我妻、嘴平、竈門は無事ですか?」
肩を抑えながら隠に詰め寄る光希。
早く横になれよ……という顔をした隠が光希を押し戻し答える。
「はい、その三名は無事です。竈門殿以外はこちらに入院しております。竈門殿もまもなく運ばれて来る予定です」
そう言われて、初めて力が抜けた光希。
「はぁ……よかった。くっ…いててて」
途端に痛みが襲う。
「はい、横になってください」
隠が羽織と上着を脱がせ、光希を横たえる。「安静にしててくださいね」と言い置いて、隠は部屋を出ていった。
なにこれ。とにかく痛い。めちゃくちゃ痛い。こんなに痛かったのこれ、と思う程体中が痛かった。光希はうめき声をあげる。
呼吸を使うと少しだけ楽になる気がした。
よし、寝てる間、ずっと呼吸を使おう。疲れるけど、傷の回復が先だ。
そう思った光希はひゅうぅぅと全集中の呼吸を使いながら寝た。
途中止めてしまうこともあったが、極力意識して使い続けた。