第31章 熱
救援に来てくれた千代に光希を託し、庭に出て体についた竹の葉を払う。
玄関に回り「お邪魔します」と声をかけて屋敷に入る。
光希の部屋に戻ると、彼女は寝ていた。
その衰弱した姿に、善逸は眉を寄せる。
布団の側に胡座をかいて座る。
「千代さん、手紙をありがとうございます。教えてくれて良かったです」
「ごめんね、善逸くん。足が痛いのに」
「いえ、そんなのはどうでもいいです」
「よくはないわ」
千代は苦笑いする。
「医者はなんて言ってましたか?」
「とにかく薬飲んで寝るしかないって。胃が良くないみたいでね。食べられないから回復が遅いの」
「そうですか……。こいつ、蝶屋敷でも吐いてたのに。心が辛いことも、身体がしんどいことも、俺は気付いてやれなかった。わかってるつもりだったんだけど……」
善逸が太ももの上に置いた手を握りしめる。
「俺は……。こんな俺が、この子の側にいていいのかなぁ……負担になって、苦しめちゃうだけなのかなぁ……俺のせいで、倒れちゃったのかなぁ……ごめんなぁ……」
善逸の目からぽろりと涙が落ちる。
「幼馴染って、思考が似るのかしら」
「……え?」
善逸は涙を袖で拭きながら千代を見る。
「光希も、同じような事言ってたわ」
「そっか……」
「一緒に居たいならいればいい。二人ともそう願ってるんだから。
一緒に居るなら、もちろん衝突もあるわよ。人間なんだから当たり前。何考えてるなんて正確にはわからないんだし、相手のこと想ってたって全て伝えられるわけじゃない」
「そうですね……」
「でも、一緒にいれば、喧嘩しても仲直りが出来るし、相手を支えてあげることも出来る。今、善逸くんは光希の目の前にいるのよ。弱っちい事言ってないで、支えてあげてね」
「はい」
「その為に君を呼んだのよ」
「はい」
「どんなに支えてあげたくても、……居なくなってしまったら出来ないのよ」
千代は寂しそうに笑う。