第31章 熱
夕方になり、更に熱が上がる。
……あ、生きてた。…あっちぃ
目が覚めた光希はむくりと身体を起こす。
関節は痛いが、まだ身体は動く。剣士として鍛えていたからだろうか。
しかし、両手をぐっと握るが、力は入らない。
……はー、ううっ…しんどっ
風を浴びたくて、這いながら障子を開けにいく。そっと開けると、ふわりと良い風が舞い込んだ。
その心地良さに、座ったまま目を閉じて風を感じていると、「光希っ!!」と声がした。
光希が目を開けるより早く抱きしめられる。
熱で頭が回らない。
でも、この世界で最も安心できる場所に包まれて、勝手に涙が出る。脳が状況を認識するより速く、心が先に反応を示した。
「光希、光希……!嫌だったらごめん。俺、考えてもわかんねえから。くっつかれるのが嫌だったら……、俺が重荷だったら、ごめんな。でも、ちょっとこうさせて……お願い。お願いだからっ」
少年は縋りつくように、ぎゅっと少女を抱きしめる。
「嫌じゃ、ない……」
「……え?」
「重荷なんかじゃ、ないよ…っ……」
「光希……」
「ごめんね、善逸。遠ざけたりして、本当にごめんねえ…うわぁぁぁん……」
草履も脱がずに縁側へ飛び込んだ善逸。
物音を聞きつけて見に来た千代は、抱きしめ合う子どもたちを見て、微笑みを浮かべてその場を離れた。草履のお咎めもなし。
「……お前、めちゃめちゃ熱い」
「はぁ、はぁ……、うっ、ぐすっ……はぁっ、はぁ、」
「おい、大丈夫か、いろいろと……」
善逸の腕の中でぐったりする光希。
気力は多少回復したのかもしれないが、泣いてしまった分、体力は削られた。
善逸は慌てふためいて「か、母ちゃんっ!母ちゃーん!!ちょっと来てえ!」と助けを求めたのだった。