第31章 熱
昼頃に光希は目を覚ました。
義勇は任務に行ったあとで、見送れなかったことを反省する。
「光希ちゃん、起きた?」
「母ちゃん」
千代が部屋に入ってきて、額に手を当てる。
「まだまだ熱いわねぇ……お医者さんに診てもらわないと」
「大丈夫だよ。下がる下がる」
「お粥、食べられそう?」
「うーん……吐いちゃうんだ」
「吐いてもいいから食べなさい。少しでも吸収させないと」
「……うん。わかった」
千代は台所へお粥を取りに行った。
光希は自分の額に手を当てる。
手も熱いのでよくわからない。
とりあえず、良くなっていく感じが全くしない。
そこへ、鴉が手紙を持ってきた。
「ありがとう」
手紙は善逸からのものだった。
早く良くなって戻って来てください、待ってます…という内容だった。
とりあえず、状況が伝わったようでホッとする。
安心したらまた熱がどっと上がる。
吐き気も出てきて、また吐きにいく。
千代が作ってくれたお粥も、少ししか食べられなかった。光希が初めて千代の料理を残した。
夜、義勇が不在のため、千代は冨岡邸に泊まることになった。
「はぁ、はぁ、ごめんねぇ、母ちゃん……」
また吐いた光希が、申し訳なさそうに言う。
「いいの。そんなこと気にしないで」
「ありがと……」
「こんな光希ちゃん一人にして帰れる訳ないでしょ」
「ねえ、母ちゃん……我儘言っていい……?」
「なあに?」
「おんなじ部屋で、寝たい……」
千代は微笑みながら「いいわよ」と言った。
並べた布団の中で、光希は心のもやもやを全部千代に話した。
過去の事も、善逸のことも、話せる範囲で仕事のことも。
「やっぱり光希ちゃんは、善逸くんがいないと駄目なのね」
全て聞いた上での第一声がそれだった。