第31章 熱
「今日は泊まれ」
「はい。明日の朝戻ります」
「熱が下がるまで駄目だ」
「でも、善逸と仲直りしなきゃ……」
「あいつが来ればいい」
「足折れてんですよ、あいつ」
「とにかく、休め。寝ろ」
義勇は、光希の肩を押して寝かせる。
少し押し倒すような形になり、義勇はぞくりとした。
無表情のまま布団をかけて、再び額に手を当てる。
相当熱が高い。
当てた手の近くにある傷を見て僅かに眉をひそめる。
「あの、義勇さん。うがいとかしてくださいね」
「大丈夫だ」
義勇は立ち上がる。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
珍しくおやすみと返してくれる義勇。
心が暖かくなった。
熱が高く、光希は直ぐに眠りにつく。
義勇も自室で布団に入るが、なかなか寝付けない。
惹かれてきている。少しずつ、確実に。
あってはならない所へ。
あの娘は危険だ。
距離を置かねばという思いと、いっそのこと…という気持ちとが競合している。
義勇は、スッと気持ちを抑え、恋慕から思慕へ切り替える。
掛け布団を深めに被り、眠りについた。