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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第31章 熱


ふと目が覚めるともう夕方だった。

「嘘っ……!」と焦って飛び起きる。途端に込み上げる吐き気。

よろよろと起き上がって洗面所に行って吐く。



「この馬鹿弟子が」

背後に義勇がきて、手ぬぐいを渡してくれる。


「はぁはぁ、あ、義勇さん。良かった居たんですね」
「自分の体調もわからないのか」
「すみません、前の任務で負傷しました」
「違う」

義勇は光希の額に手を当てる。
義勇の手が冷たく感じ、なる程、と思う。


「どおりでふらつくわけだ。吐き気もそれか」
「遅い」
「ご迷惑をおかけしてすみません」

身体が燃えるように熱い。何故気付かなかったのか不思議なくらいだ。


「義勇さんにお話があって、蝶屋敷から戻ってきました」
「わかったから、まずは寝ろ」

光希は口をゆすぎ、手拭いで口を拭う。



部屋に戻ると、義勇も来てくれた。


「移るといけないので、離れてください。戸も開けたままで」
「必要ない。俺は風邪は引かない」


戸を閉めて、布団の脇に座る義勇。
光希は布団の上に正座する。



「『総司令官』の役職について、正式にお断りをしに参りました」
「理由は」
「俺は、弱いからです。人を殺す覚悟がどうしても出来なかった」

「お前は甲だぞ。柱候補がそんなことでどうする」
「はい。ですので、降格させていただけませんか?」
「降格……」
「癸からで構いません」
「前例がない」
「では、俺が第一号で」

「そんなに嫌か」
「はい。隊の為になるとも到底思えません」
「それはこちらが判断することだ」

「もし、どうしても、とのことでしたら……」
「辞める、か」

「はい」


義勇はふぅ…と息を吐く。
上層部と光希の間で板挟みの彼を思うと申し訳なくなる。


「代案として、ですが。俺は宇髄さんを推します」
「宇髄……?引退したぞ」
「現場を、でしょ。総司令官なら、問題ない。戦況把握に関してはあの人は俺の十倍凄いです。経験値が違う。戦略はどうかわかりませんが、あの人ならいけるでしょう。腹立つくらいに頭がいい」

「発案しておく」


義勇は頷く。

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