第30章 階級を示せ
「い…一日だけ?」
「うん」
「一日経ったら、また一緒に、居てくれる?」
「うん」
「わ…別れる、とか……言わないよ、ね?」
「言わないよ」
「わかったよ……」
善逸は俯いたまま部屋を出ていく。
「明日の朝に、また来る。音も聞かないから、安心して」
後ろを向いたまま、そう声をかける善逸。
「ありがとう。我儘ばっかで、ごめんね」
そう言うと、善逸は廊下を走っていった。
ふぅ……とまた息を吐く。
彼を傷付けてしまったのは、申し訳ないが、頭の冷却期間が必要だ。
それほどに光希は余裕がなかった。
今日一日でカタをつける。
そう思って、隊服に身を包む。
アオイに断りを入れて、蝶屋敷を出る。
向かうは冨岡邸。
怪我に響かないように歩いていく。
貧血なのか、身体がだるい。
冨岡邸についた光希は千代の声を遠くに聞きながら、ゆっくりと意識を手放していった。