第30章 階級を示せ
『光希、キレんな馬鹿。お前の悪いところだぞ』
善逸の言葉を思い出しながら、光希は屋根の上で大きく溜息をついていた。
一日に二回もキレるなんてここ最近はなかった、と思う。善逸絡みで一度、正に善逸とのやりとりでもう一度。しかも極力喧嘩しないと言った直後に、だ。
……え、普通、年頃の娘がこんなに喧嘩する?
どんだけ怒りの沸点が低いんだ、と反省する。
血をだいぶ失ったのに、血の気が多すぎる。
屋根に寝転んで、星を見る。
「父様、母様…、光希はどうしてこうも怒りんぼなのでしょうか…。情緒不安定過ぎます」
このままだと寝てしまいそうだったので、慌てて部屋に戻る。
屋根の上で寝たら、しのぶに殺される。
声が聞こえたのか、部屋に善逸は居なくてホッとする。
部屋を飛び出した時にぐちゃぐちゃだった布団は、きれいに整えられていた。彼がどういう思いで布団を直し、この部屋を出て行ったのかを想像すると胸が痛くなる。
……このままじゃ駄目だ。明日、ちゃんと謝ろう。そして…
光希はそう思って目を閉じた。