第30章 階級を示せ
「覚悟、したよ」
善逸が力強く言う。
「教えて、光希。俺はなんでも聞くし、きちんと受け入れる」
「いや、私が受け入れられずに拒否ってることを、先に受け入れないでよ」
「お、おお……そうか」
ふぅ…と、一息吐く。
「少しは自分で考えな。私に頼ってばかりじゃ駄目だ。こんなんだと、この先、死ぬよ」
「う、……うん」
「じゃあ、一つだけ、手がかりをあげるね」
光希は右手を上げる。
「階級を示せ」
そこに現れた文字は……
甲(きのえ)
だった。
……マジか
「わかった?」
光希はスッと手を下ろす。
善逸の方を見ない。
まさか、一番上の階級まで登っていたとは。隠れ家で大金を出してきたときも、任務の時に自分の階級を言わないことも、何も気付いていなかった。
「……お前が拒否ってるのは、『柱になれ』か?」
善逸が光希を見ずに言う。
「もう一息」
「え?違うのか?」
正解だと思った善逸は、違うと言われて彼女を見る。
「私と実弥さんのやり取りを思い出してごらんよ」
「不死川さんとの……」
「もー!手がかり一つだけって言ったのに!」
「ご、ごめん……」
善逸はしばらくむむむと考える。
「軍師……か?」
「そう。まあ、正解」
光希は悲しそうに笑う。
「柱は、全力で断ったの。水柱は義勇さんいるでしょ。でも逆転の方を使って逆柱(さかばしら)になれとか言うんだよ。なんだそれっつーの!」
「柱になりたくないのか?」
「ぜっったいになりたくない!」
意外な答えに驚く。善逸は、隊士はみんな柱を目指してると思っていた。
「つか、なれねえよ。あんな体力おばけ達と肩並べるわけねえだろ、阿呆がっ……コホンッ、お馬鹿さん」
「訂正が遅いよ」
「私は柱と組んで任務することが多かったから、鬼がめちゃめちゃ強いのね。で、階級がどんどこ上がっちゃっただけなの。実際に鬼は全部柱が倒してるのにさ。みんな勘違いしてんの」
「勘違いじゃないよ。お前は、強い」
善逸は戦いの時の光希を思い出す。
柱と肩を並べられるかといわれれば、確かにわからないが、強いことは間違いない。