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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第29章 風


「シナズガワさん、すみませんがちょっと立って」
「んだよっ!」
「善逸、こっちに来て。シナズガワさん、あっち行ってください。善逸と交代です」

不死川はムスッとして光希を睨む。


「調書、要るんですよね?ここ、机。俺、書く。善逸と。ね?」

不死川の前にあるベッドサイドの机を指差して、何故か片言で説明する。


「クソッ……」

不死川は立ち上がり、善逸と交代する。


善逸は不死川が座っていた椅子に座る。

不死川はベッドに座り、机を覗き込んでいる。


「善逸、始めの方は俺も知ってるから、一緒に検証していこう。気付いたことや補足を入れてってくれ」
「わかった」

二人は、村外れに来た鬼について情報を出し合う。

また光希はサラサラと書き留めていく。


不死川はその分析能力に感嘆する。先程自分と検証したときもそうだったが、客観的に見るとその凄さが顕著にわかる。

相手から情報を引き出す話術の巧みさもさることながら、次から次へと出てくる作戦の多さ、思考力、頭の回転の速さ。
どれもずば抜けている。


「こんなもんか」

また三枚くらいになった紙を並べて読み返す。
ぶつぶつと呟きながら、そこにいくつか補足を加えていく。


「肝心の討伐時のことが、よくわからねェ」
「うっ、すみません。俺、必死すぎてあまり覚えてなくて。その時は光希も居なかったし」

「使えねえなァ、テメェ。しっかりしとけよゴミクソがァ、男のくせによォ」



「……………なんだと?」

不死川がそういった瞬間、光希がキレた。

「善逸は命懸けで頑張ったんだぞ!なんでそんなこと言うんですか!」
「本当のことを言っただけだァ!鬼の倒し方は何より重要な部分だ!お前もわかってんだろがァァァ!」
「そんなこたぁ百も承知なんだよ!馬鹿じゃねえんだ!だからといって、何でこいつが責められなきゃなんねーんだ!」

二人は立ち上がり、ベッドを挟んで今にも殴りだしそうに殺気を出し合っている。善逸はひたすら焦る。


「光希っ!やめろ!駄目だ!!不死川さんも落ち着いてくださいっ!!」


善逸は慌てて二人を止めようと叫ぶ。


不死川が来るまで己の腕の中で超絶可愛らしく笑っていた光希。それと今とのあまりの違いに目眩がした。

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