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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第29章 風


光希は紙を服の中にサッとしまう。

「あ、テメェ!くそっ!」
「さあ、どうします?服脱がせて強姦のような真似でもしますか?」

善逸も焦る。不死川は脱がせかねない。

というか、ずっと気になっていたが、光希のこの不死川に対する態度は何なんだ。上官に対する態度じゃない。しかも柱の中でも最恐の不死川相手にこの舐めた態度。

善逸はいろいろとわけがわからない。


「チッ……まあ、いい。後で奪う。……おい」
「え!俺ですか?」

急に声をかけられて気絶しそうになる善逸。


「あァ?他に誰かいんのかァ?」
「い、いえ……」
「テメェ、もう一体と殺りあったんだろォ。教えろやァ」


……こわっ!こっわ!怖すぎて吐くわ


「えと……その…村に来た鬼は……」
「ハァ?早くちゃっちゃとまとめろやァ。こいつみてぇによォ」
「は、はい……」

……光希みたいにって、そんなの俺には無理だよ。あんなに分析して、図解して……。俺にあれをやれと?しかもこの恐怖の中で?


「やめてください」

善逸が怯えていると、光希が不死川を睨む。


「あァ?」
「そんな高圧的な態度で接しても、出るもんも出ませんよ」
「別に高圧的になんて、」
「高圧的なんですよ。あなたは。自分の怖さを自覚してくださいよ。顔が怖いんだから」

善逸は血の気が引く。

「本当に、いい度胸してんなテメェ」
「ありがとうございます」
「またボコられてえの?」
「望むところです」

平然と睨み返す光希。

「そうなると……俺はボコられて動けなくなるから、調書は御一人でどうぞ」
「……チッ」

不死川は悔しそうに腕を組む。


「善逸、大丈夫だよ。さねみ……シナズガワさんは、顔ほど怖くない。笑った顔なんて驚くほど優男だ」

「はァ?!テメェ何言って、」
「犬、好きなんですね。俺もです」

そう言って笑う光希に、不死川は青ざめる。野良犬に餌をあげているところを見られた…のか?

「殺す!テメェは冨岡と一緒に殺してやらァァ!」
「俺と義勇さん、組んで戦うとかなり強いですよ。殺すなら俺単品で狙うことをお薦めします」


光希に対して声を荒げる不死川の音は、確かに語気程強くなかった。


『顔ほど怖くない』というのは本当みたいだな、と善逸は少しだけホッとした。

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