第28章 思い出
「あのね……」
善逸の腕の中で、光希が言う。
「よく覚えてないんだけどね。私、父様と母様が……殺されたところに行こうとした、気がする」
昨日の行動を喋りだした。
「蛍のところ?近いのか?」
「遠いよ」
「なのに、歩いていこうとしたの?」
「そうみたい。馬鹿だね」
光希が自嘲気味に笑う。
「行きたい?」
「まだ、行けない……な。でも、行って謝りたい」
「光希のせいじゃないんだよ。お父さんもお母さんもわかってるよ」
「うん、それでも謝りたい」
「じゃあ、行くときは一緒に行こうね」
「……うん」
「一人で行かないで。俺、泣くよ?」
「うん。一緒に……付いてきてね。善逸が一緒じゃないと、無理、私」
光希がそんな可愛いこというから、善逸は堪らなくなる。
「そんなに俺を頼りにしてくれてんの?嬉しいなあ」
善逸は光希の肩を掴んでそっと離す。
「じゃあ、俺、もっと頼れる男になるように頑張るからさ」
光希の顎を持ち上げる。
「ずっと俺のこと、好きでいてね」
善逸は、光希の唇に優しく口付けした。