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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第28章 思い出


―――『言わなくてもわかる』はまやかし。
言わなきなゃわからないことがある、か……

善逸は少し考えて、口を開く。



「光希、好きだよ」
「うん」

「……え、言ってよ。光希も」
「善逸は、言わなくても音でわかるでしょ?」

「は?なんだそれ!ずりぃ!言わなきゃわかんないっつったの自分じゃん!」
「えー?言わないとわかんないの?」
「ずりぃ!ずりぃよっ!さっきと違うこと言いだしたこの子!酷いっ!もう、なんだよっ!」

「あはは!善逸こそ!拗ねないって言ったのに拗ねてんじゃん!」


善逸は思い通りにならなくて、子どものようにぷいっとそっぽをむく。
光希は笑って、ふてくされる善逸をぐっと引き寄せて耳元で囁く。


「……まあ、言わなくてもわかるけど、それでも敢えて口に出して言って欲しいってこと……あるよね?」

突然のことに固まる善逸。


「好きよ。善逸」

とっくに音で伝わっていることを、彼女はしっかりと口に出した。


「……っ!」

顔を赤くする善逸。
光希が、下ろした髪を揺らして美しく笑う。


―――こいつの、これだ!これがたち悪いんだ。一度下げといて上げる感じ。心理戦の巧さ。
これに次々と男たちがやられるんだ……



「善逸も炭治郎も、女心を勉強して、ちゃんと言うことは言う男になろうね!決める男は格好良いぞ」


「……炭治郎に言ってやって。俺はもう格好良いから。好きな子にちゃんと好きって言えるもん。凄いもん俺。やればできる子なんだもん」

「そうだね。善逸はちゃんと言うもんね。まあ、今までいろんな子に好き好き言いまくってきた過去があるからな気もするけど」
「うっ……」

――強がってみせても、綻びをつついて下げてくる


「でも、初めて好きだって言ってくれた時は嬉しかったよ」
「戸惑ってたじゃん」
「ふふ、そうだったかな?」

――そして、ほら、また持ち上げる


「戸惑わせたとしても、やっぱり言葉で言わないと伝わらないし、始まらないよね」
「まあ、そうだな」
「善逸が勇気出してくれたから、今の私たちがあるんだよ」

――ね、こうして相手を喜ばせる


「ありがと、善逸」


俺は、お前の心理戦を理解しながら、それでも絶対に勝てない……


善逸は、諦めて「どういたしまして」と答えた。


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