第28章 思い出
「なぁ、二人になったんだけど」
「ん?そうだな」
「任務も終わったじゃん」
「まあとりあえず、な」
「………」
「何?」
「………」
「ああ!言葉ね」
光希が的を得たようで、善逸が顔を綻ばす。
「ごめん。いろいろあって、忘れてた」
「別に、いいけどさ」
「私は善逸みたいに音でわかるわけじゃないから、言いたいことはちゃんと言ってよ。言ってくれなきゃわかんないよ?」
「今、わかってくれたじゃん」
「たまたまだよ。普通はわかんない、よ……」
そう言って、光希はハッとした顔をする。
「何?」
「………」
「何考えてんの?」
「……や、何も」
「嘘つき。ヤバいって音してる」
「………」
「説明してよ。何?」
「善逸、拗ねるもん」
「俺が拗ねるような事、考えてたんだ」
「……まあ、そうだね」
善逸は溜息をつく。
「拗ねないから話してよ」
「たいしたことじゃないの」
「じゃあ話せるでしょ」
光希は観念して話し始める。
「炭治郎とカナヲのことなんだけどね」
光希は炭治郎の名前を出して善逸の機嫌が悪くならないか見ていた。大丈夫そうなので話を続ける。
「炭治郎も、善逸と同じで相手の感情がわかるでしょ?」
「うん」
「だからさ、逆に、ちゃんといろんなことを口に出して言ってないんじゃないかなって。それだと、炭治郎にはカナヲの思考がわかっても、カナヲには炭治郎の想いがわからないんだよ」
「なるほど……」
「炭治郎はそれに気付いてないんじゃないかなーって思ったの。
『言わなくてもわかる』なんてのはまやかしなんだよ。耳や鼻の良い君らだけが、一方的にわかってるだけ。言わなきゃ伝わらないこともある」
善逸は、自分にもそんなことがある気がした。
へたにわかってしまうだけに、相手もわかってると思い込んでるかもしれない。
「ま、私はさ、善逸とは付き合いが長いからわかる部分もあるけどね。炭治郎とカナヲはそうじゃないじゃん?」
「なる程な。あいつに教えてやってよ」
「うん」
傍から見てて、それはそれは進展していかない炭治郎とカナヲ。
親友として、また、炭治郎を光希に近寄らせないためにも、そこの恋愛は是非とも成就してもらいたい善逸だった。