第28章 思い出

汚れを落とした炭治郎が部屋に来ると、光希は喜んだ。
炭治郎も嬉しそうに笑う。


「炭治郎、怪我ないか」
「俺は大丈夫だ。光希が酷いんじゃないか……痛いだろ……可哀想に」



――お前ら、近いんだよ！


善逸は苛つきながら二人を見ている、



「痛いけど、大丈夫だ。縫ってもらったから血も止まってるし」
「早く治れ……治れ…治れ…」
「何それ」
「おまじないだ！弟たちが怪我したらいつもやってたんだ」

炭治郎は包帯の上にそっと手を当てて、治れと繰り返す。

「あはは。ありがと、兄ちゃん！なんだか懐かしい感じがするな。お、痛みが引いた」
「だろ？」
「治った！」
「いや、治ってはいないぞ」

―――そうかい！そうかい！効き目抜群でよかったね！


「……あ、炭治郎、ごめん」
「ん？」
「善逸がブチ切れそうだわ」
「確かに嫉妬の匂いがするな。でも大丈夫だ。さっき許可もらったんだ俺は。な？善逸」
「………おう」

腕を組んで不機嫌そうな善逸に、炭治郎は笑ってしまう。


「許可？なんの？」
「光希に触ってもいいって許可」

「……っ！そんなもの出した覚えはねえ！」
「同じことだろ？」
「違う！」
「触っちゃ駄目なのか？」
「そうは言ってねぇけど！」

言い合いを始める炭治郎と善逸。


「……なんかよくわかんないけど、俺に関する許可は俺が出す。違うか？」

光希が発した一言で、二人の男子は「その通りデス」と黙った。

二人の間で光希が笑った。



「伊之助は？」
「俺と同じくらいに任務にいったから、そろそろ戻ってくるんじゃないか？」
「早く帰ってこないかな。会いたいな……」

「光希、また善逸が拗ねるぞ」
「別にもう拗ねねえよ。疲れちまうわ」
「え、じゃ光希にくっついていいか？」
「いいはずないだろ！」


やれやれ、と光希は思う。


しばらくすると炭治郎が眠そうにしたので、善逸はここぞとばかりに追い出す。
任務で疲れている炭治郎は部屋へ寝に帰った。