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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第28章 思い出


「まあ、でも、持て余してるなら、俺がもらおうか」

炭治郎が挑戦的な目で善逸を見る。

以前も同じように、炭治郎は善逸の気持ちを試すように言ってきた。


「絶対に、やらねえ。たとえお前でもな」

善逸はにやりと笑って返す。
炭治郎が本気でないことは、音でわかる。


「『勝手にしろよ、俺には関係ない』……だったのにな。素直になったな、善逸。はは」
「おかげさまで」


「大切な人が出来ると、人は変わるんだな」
「そうだな。大変なことも多くなるぞ」

「俺も……」
「光希は駄目だぞ」
「わかってるよ」
「カナヲちゃんは、のんびりな子だからな……」
「うん……」

炭治郎は小さく溜息をつく。


「光希が起きたら相談してみろよ」
「うん」
「こいつ、本当に凄いのよ。前回の合同任務でも、他の隊士どんどんこいつの事好きになるの。無意識なのか意識的なのかわかんないけどさ。なんなの?もう。やめてくれよ。モテ方がえぐすぎて心配が絶えないよ俺」
「ははは。苦労するな、善逸」
「本当、苦労ばっかりだよ俺。はぁ……」

「でも、幸せだろ」
「そりゃあもう」

「惚気るな」
「あらやだごめんね!」

二人は小さく笑う。


「なあ、善逸」
「ん?」
「恋愛感情は抱かないからさ……。俺、光希の事大切に思っててもいい?」
「……もちろん。光希もお前のこと大好きだからよ。起きたら会ってやって」
「ありがとう」


任務からそのまま部屋に来た炭治郎は、汚れを落としに部屋から出て行った。



「光希ー……、炭治郎が帰って来たぞ。お前の大好きな炭治郎くんだぞ。起きろー。……なんてな」

戯れに呼びかけてみる。
すると、「ん……、たんじろお……?」と反応をする。

「炭治郎、帰ってきたの?」

……こいつ、まじで起きやがった。ぐーすか寝てたくせにっ。こんにゃろっ!


むにゃむにゃと寝ぼけながら、炭治郎は?という光希を、「もっかい寝とけ!貧血だからな!」と布団に沈めた。



もし、出会う順番が違っていたら……

善逸はたまに考える。


きっと、光希と炭治郎は惹かれ合っていただろう。
でも、善逸は炭治郎より先に彼女と出会い、長い刻を過ごしてかけがえのない絆を創った。


その絆を、善逸は強く信じている。


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