第28章 思い出
光希はふらふらしながら、屋敷内を歩き、きよ、すみ、アオイに謝った。
しかし、誰一人怒っておらず、「もう善逸さんに謝ってもらってますから」と笑う。
自分が寝ている間に、善逸が痛い足を引きずって屋敷を周り、既に頭を下げてくれていたと知る。
部屋に戻ると椅子に座る善逸がいた。
「よし。ちゃんと謝って、戻ってきたな」
「うん」
よろめきながらベッドに戻る光希。
ベッドの上に座り、頭を下げる。
「心配かけて、ごめんなさい」
「俺にはいいんだよ」
「そんな訳にはいかない。一番心配かけて、一番迷惑をかけたのはお前だ」
「心配はしたけど、迷惑はかけてない。俺に関しては、な」
善逸はそっと光希を抱きしめる。
「無事でよかった」
「ごめん……」
「見つからなかったらどうしようって……」
「ごめん……」
「死んでたかも……しれないんだぞ……!」
「そうだね、ごめん……」
「居なく、ならないで……」
「……ごめん、ごめんね善逸」
善逸の肩が震え、泣いているのがわかった。
「……俺も、ごめん。光希」
「え?」
「光希がとんでもなく辛い時に、一人にした。手を離しちゃいけなかったんだ」
「いやそれは、」
「ごめん。ごめんな光希。辛かったな」
「………っ…」
「すぐには無理だけど……、少しずつ受け入れていこう、な」
「……できる、かなっ……、ひっく、自信、ないよ……ううっ……」
「ゆっくりでいいんだ。急がなくていいよ。また辛くなっちゃっても、俺が絶対にそばにいるから。いっぱい泣いていいんだ。大丈夫、大丈夫だよ」
「うっ、くっ……、うわぁぁん……父様、母様っ…ごめんなさい……ごめんなさいっ!!」
「よしよし。いい子、いい子。大丈夫だ」
善逸は、光希から聞こえるとてつもなく辛く悲しい音を、逃げずにしっかり聞いていた。
もし本当に光希が自分を信じて記憶を取り戻したとするのなら、きっと二人で乗り越えていけるはず。
光希が泣いている間、そう思って善逸は自分より小さな背中をさすり続けた。
光希の暖かさを感じて、静かに涙を流しながら。