第28章 思い出
「起きたか、光希!」
善逸が心配そうな顔で光希を覗き込む。
「ううっ……ぜ、いつ……、うわぁぁん……」
「どうしたんだ、寝ながら叫んで酷く泣いてるから……。大丈夫か?傷が痛いのか?」
善逸が光希の涙を手ぬぐいで拭う。
「うううっ……ちがっ、父、さまと、……か、さま……ひっく、うっ、うっく……」
「そうか、よしよし。夢見てたんだな」
善逸は、傷にひびかないように頭を撫でさすってくれる。
「善逸、……っ、うっ、うわあぁぁぁぁぁぁん……!!」
光希は善逸の前でひたすら号泣した。
理由のわからない善逸は少し戸惑ったものの、抱きしめて、心ゆくまで光希を泣かせてやった。
半日程気を失っていた光希。貧血もあって、号泣は長時間にはならず、涙は止まった。
涙が落ち着いた光希は、ぼんやりしながらぽつりぽつりと話し始めた。善逸は光希が話している間、ずっと手を握っていた。
「……それは、お前のせいじゃない」
「俺のせいだよ。蛍が見たいって駄々をこねたんだ……。俺が……」
「光希、違う。違うよ。」
「…………」
光希は俯いて黙る。
「辛いな……」
「……しかも、俺は今まで忘れてたんだ。最低だ。本当に……」
「仕方ないこともあるよ。自分を責めちゃ駄目だ」
善逸は光希が落ちついたので、しのぶに声をかけに行こうと立ち上がる。
この状態の光希を一人にしていいものか迷ったが、呼びに行くことにした。
「しのぶさん達に声かけてくる。すぐ戻るからね」
そう言って頬に口付けをするが、光希は無反応だ。
善逸はとりあえず廊下に出て声をかける。善逸も足にヒビが入っており、速く移動することが出来ない。
ほんの少し離れただけだったのに、善逸が部屋に戻ると光希はベッドから消えていた。