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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第4章 那田蜘蛛山


「あの少年、危ういですね」

しのぶが光希を見送る。

「………?」
「あ、いえ。あの子、私を探して走り回ってたときは涙を流していたようなのですが、私を見つけたら直ぐ泣き止んで」

善逸の治療をしながら、しのぶが話す。

「今も、君を見ても泣き出さなかった。人前で泣けないのは、苦しい。溜め込んだ涙をいつか消化しきれなくなる。あの少年が何かとつっぱしるのはそれです。
ああいう止まることの出来ない人間は…いえ、何でもありません」


善逸はぐるぐる巻きにされ、『治療済』という紙を貼られた。光希が気になったが、物理的にも動けなくなってしまった。

「君がちゃんとあの子を助けてあげてくださいね」

治療を終えると、しのぶはそう言ってふわりと去っていった。



『ああいう人間は……』

しのぶは明言を避けたが、善逸にはそこに続いたであろう言葉が解った。


――――死なせない。俺が、ちゃんとあいつを止める。走ってっちまうなら追いかける。泣きたいときにちゃんと泣かせる。

だけど…、今は動けない。炭治郎、伊之助、頼む。光希を守ってくれ!―――――


善逸は歯を食いしばって空に祈った。


美しい胡蝶しのぶを間近で見るなどという本来なら大いなる幸せを感じる出来事が起きたというのに、善逸の心は微動だにしなかった。


そのことに、善逸自身も気が付かなかった。



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