第27章 合同任務 2
童磨が、光希の前に音もなく近付く。
不死川がまた立ち上がろうとする。
だが、光希は一瞬だけ不死川に視線を送り、動くのを制する。
「なに、それ。どんぐり……かな。なんでそんなもの……」
「…………」
「大事なものなのかな」
「…………」
「ちょっと見せてよ」
童磨は光希の手からどんぐりを奪う。
光希はやめろと手を伸ばす。
「誰かからの贈り物かな?家族?友だち?恋人?……それにしてもどんぐりって。子どもみたいだね、あはは」
「返せ……笑うな…それは、俺の……」
―――ここまでやれば、こいつは必ず…!
「あはは!こんなのなんの支えにもなんないでしょ!ごみだよ、ごみっ!」
童磨は光希に見せつけるように、笑いながらどんぐりを手で握りつぶした。
――――そうすると思ったよ!
「え……?」
童磨は自分の手のひらを見る。
どんぐりの破片は地に落ちたが、己の手に無数の細かい針が突き刺さっている。
猛毒が回りはじめ、手は凄い勢いで変色していく。とたんにぐらりと視界が揺れ、童磨は片膝をつく。
「実弥さんっ!!」
それまで弱々しく地に伏していた光希がはね起きた。
目にかかる血を乱暴に拭う。
「たぶん長くは効かない!」
「よおし!ガキにしちゃよくやったぜぇ!!」
二人は逆転の呼吸で童磨を狙う。
「うおおおおお!!」
「いっけーーー!!」
逆転を乗せた不死川の刃が童磨の首を捉えるその時、童磨が飛び退いた。初めて逃げに転じる童磨。
「う、うう……毒か、分解しなきゃ。ぐうぅ……」
「くそ、まだこんなに動きやがる。くそったれェ」
「まだ効いてる!!狙って、」
「とりあえず、この娘だけは始末しないと。まさか本当に切り札もっていたとはね」
童磨がよろけながら光希に近付く。その顔に笑顔はない。
光希を鉄扇で張り飛ばした。光希はかろうじて刀で弾いたが、衝撃は殺せずに吹っ飛ばされて気を失う。
「如月ーっ!クソッ!!」
不死川が駆け寄ろうとするが、「凍て曇」と技を出され近付けない。
童磨がよろめきながら鉄扇を上げて斬撃を出す瞬間、稲妻のような閃光が部屋を包んだ。