第26章 合同任務
「善逸、村長の話し、どうだった」
「ほとんど嘘だ」
「だろうな」
「村長は初めに『鬼が出ました』と明確に言った。しかし、三件の犯行は全て夜に起きていて、鬼の姿は誰も見ていないという。ここに矛盾がある」
「ん?どういうことだ、如月」
「鬼を見てないのなら、鬼がやったとは思わないはずです。村長も言ってたけど、野党か、身体が食われているなら野犬とか熊とか、そのへんの仕業だと思うのが普通だ」
「てことは……」
「村長は鬼に遭っている。個人的に」
「それって、村長が鬼と内通してるってこと……?」
「そうだ。……でも悪い人には見えなかった。たぶん人質かなにか取られているんじゃないかな」
「人質……」
「じゃあ何故、村長は俺たちをこの村に呼んだんだ」
「その鬼からの指示、でしょうね」
光希は説明を続ける。
「外部と繋がりがないってのも嘘だ。荷車の轍が外から中へ向かってついていたし、屋台の土台もある。行商人が来てるだろう。
だからこの遅い時間の任務開始も、俺たちに村で情報収集させないための鬼からの指示だろうな」
「つまり鬼の今夜の狙いは……」
「ああ、村人じゃない。俺たちだ。
隊士を狙うということは食事じゃない。鬼の世界の出世か何かの為だろう」
四人が凍りつく。
「まあ村人を殺さないなら好都合。俺たちは討伐するだけです。が、村人を襲わない保証はないからしっかり配備して、」
「ふざけんな、あの村長!!」
大柄の男が立ち上がる。
「俺たちを餌にしやがって……」
「落ち着いてください」
「落ち着いてられっかよ!」
「いいえ、座ってください。
あなたが人質を取られていたらどうします?恋人や母親を取られていたらどうですか?
……俺も、母さん取られてたら、何でもするかもしれない」
「…………」
「善逸、村長さんからは嘘の音だけか」
「…いや。悲しみと申し訳なさの音もした。今のお前の説明を聞いて、合点がいったよ」
「ね?仕方ないのかもしれない。ここはひとまず、俺の……天国の母さんに免じて、一度座ってくれませんか?」
「……ちっ」
「詳細はわかりませんが、きっと俺たちは今なかなかヤバい状態かもしれません。時間がない。策を考えましょう。生き残るための」
また地図に目線を戻し、鬼の出現場所の予測をする。