第26章 合同任務
善逸が起きてきた。
「おはよう、善逸」
「おはよう」
善逸は口付けをする。
任務の日なので断られるかな、と思ったが、光希は目を閉じて受け入れてくれた。
それが嬉しくて何度も角度を変えて口付ける。緊張もあって、ある意味興奮しているのかもしれない。
止まらなくなると困るので、舌は入れずに唇だけを合わせる。うっすらと目を開けると、幸せそうに口元に笑みを浮かべて唇を受け入れる光希が見えた。
どうしようもないくらいの愛しさが込み上げる。
……死ぬかもしれないのに、こんなに幸せを感じるとはな
善逸は口を離し、光希をぎゅっと抱きしめる。
「愛してる」
「私も、愛してるよ」
耳元で囁く。
求めていた答えが帰ってくる。
「お腹空いた」
「離してくれないと、準備できないよ」
「離したくない」
「じゃあご飯は食べられないなぁ」
「どっちも食べたい。ご飯も、光希も」
「贅沢だなぁ」
「そう。欲張りなの、最近、俺」
善逸は名残おしそうに腕を離す。
光希は釜戸に行き、料理を温める。
てっきり朝から男化していると思っていたが、しっかりと女でいてくれた。
昨日からどこか男っぽくなってきている光希。善逸も気付いているが指摘しない。任務前は誰でも不安定になる。
やはり、光希の本当の口調は男の方である。女言葉は善逸が喜ぶから使っているだけで、慣れてはきているみたいだが、やはり脳が他に気を取られると男口調が顔を出す。
任務前のこの時間。
家を出るまでは女でいようと頑張ってくれてるんだろうな……と思い、善逸は嬉しくなった。
楽に喋っていいよ、と言ってあげたかったが、やはり女でいてほしくて言えなかった。
……そう、欲張りになっちゃったんだ、俺。お前とこうなってから
善逸は、朝ご飯の準備をする光希を見つめていた。