第24章 雷の呼吸
義勇の出発まで、善逸に雷の呼吸を教えてもらっていた光希。もちろん鍛錬が禁止されているので見取り稽古だ。
「足の使い方は……」
「手首の回転をどうやって……」
見ながらどんどん質問する光希。善逸は丁寧に教えてくれる。
「善逸、教えるの上手いな」
「そうか?覚えるのに苦労したからかな」
善逸はその実感がないみたいで首をひねる。
「炭治郎よりよっぽど上手い」
「比較対象が炭治郎かよ。あいつは酷いからな」
二人はくくっと笑う。
「引退したら善逸は育手だな」
「じいちゃんみたいになれるかな」
「女剣士ばっかり育ててそう」
「確かに。男に教える気はねえな」
そんな話をしていると、義勇が起きてきた。
「おはようございます、義勇さん」
「おはようございます」
「足は」
「七割です」
「腕」
「同じく」
「指令」
「とりあえず、まだ」
「わかった」
それだけ言って、部屋へと戻る。
「つまり、……心配してるってこと?」
「そう。善逸もわかってきたね」
「いや、全然わからんよ……」
光希は稽古場に戻って考え始める。壁にもたれて黙っている。
善逸は庭で自分の鍛錬をしている。
先程の瞑想で朧気に新技が見えてきた、気がする。
試してみたい。早く。早く。
座っていた光希がスッと立ち上がると、すぐさま庭から視線が飛んでくる。
「わ、わかってるよっ!今日はやらねえ!」
「どうだかな……」
……お目付け役かよっ!
悔しさを浮かべて稽古場を出ていく。
「どこ行くんだ」
「師匠の見送り!!」
光希が歩いていくので善逸も屋敷にあがって付いていく。
玄関で義勇を見送る光希。
善逸も隣で礼をとる。
「いってらっしゃい、義勇さん。ご武運を」
「ああ」
義勇は短く答えて出ていく。
光希から祈るような音が聞こえてくる。
「俺らも帰るか」
「うん」
光希は、義勇の去っていった方向を見つめている。この師弟の絆の深さに、善逸の胸が少しチクリと痛んだ。