第24章 雷の呼吸
庭で身体についた葉っぱを払う。
「お前、いつもあの道通ってんのかよ」
「鍛錬の時はな」
「正気じゃねえぞ」
「ワクワクすんじゃん。俺、一度不審者捕まえてるしね。街の治安維持も兼ねてんだ」
「まじかよ」
そう言いながら、善逸が光希の背中についた葉っぱを払う。
「ありがと。あ、善逸も頭」
「ん?どこ?あれ?」
「違う、右」
「ん?」
「ここ」
手を伸ばして葉を払う光希。はらりと落ちる葉っぱ。顔が少し近づいたので善逸の胸がトクンと高なる。
「あ、あり、がと」
「ん。入ろうぜ」
草履を抜いで縁側から上がる光希。
「おい、玄関からじゃないのかよ」
「あ、そっか。お前もいるしな。俺一人だとここから入っちゃう」
あはは、と笑いながら二人で玄関に回って屋敷へ入る。
「先に稽古場行ってて。稽古着に着替えてからいく」
「わかった」
「俺の稽古着、貸そうか?」
「いや、お前のだとちっさいだろ」
「確かに。義勇さんのだと大きいしな」
「いいよ、俺はこれで」
善逸は隊服を指差して、稽古場に向かった。
一人で稽古場で柔軟をしていると「善逸くん」と千代が声をかけた。
「はい」
「これ、良かったら」
「え?それ……」
「あなたの稽古着よ」
千代は光希と同じ稽古着を善逸に渡した。
「なんで……」
「冨岡さんに言われてたし、私も暇だったから作っちゃった」
「使っていいんですか?」
「ふふ、もちろん。あなたのだもの。光希ちゃんのより大きく作ったけど、すぐ小さくなっちゃうのかしら。男の子はあっという間に大きくなっちゃうものね」
「ありがとうございます」
善逸は稽古着を受け取ると、思わず胸に抱きしめた。
「俺、母ちゃんに何か作ってもらうのって、初めてかも……嬉しい」
「光希ちゃんと同じ反応するのね。あの子も稽古着を抱きしめて、嬉しそうに一日中着てたわ」
「そうなんですね」
千代は善逸の頭を撫でる。
「冨岡さんのも皆お揃いよ。頑張って鍛錬しなさい。無理しないでね」
「はい」
千代が稽古場を出ていくと、善逸は稽古着に着替えた。まだ新しい布が心地良い。白い道着に紺の袴。どちらにも「善逸」と刺繍がしてあった。
ちょうどいい大きさで、袴の紐をきゅっと締めるといつになく気合が入った。