第24章 雷の呼吸
ザザザザッと音を立てて走る。
竹藪は手入れが全くされておらず、大きめの岩がごろごろとしていて、上手く飛ばないと足をぶつける。足元も深い藪になっており、足を取られて走りにくい。
そんな悪路を、全速力で駆け抜けていく。
前を走る光希は慣れているからか、ひょいひょいと飛び越えて軽快に走っている。
後を追う善逸はたまに「おっと」とバランスを崩しているが、問題なく付いていく。
「はぁ、はぁ、流石に善逸は足速いな。初見なのにこの速さでもついてくるね」
「ふぅー、なんだよこの道、阿呆だろ!」
「楽しいでしょ!」
少し大きい岩の上に着地した光希が一度足を止めて話しかける。
「もうちょっとで着くからな。
ここから、蔦が沢山の道だから気をつけろよ。首に絡まるからな。死ぬなよ」
「首吊りになるってこと?」
「窒息する前に助けてやるよっ!」
光希は日輪刀を目の前に掲げてにかっと笑う。
「いくぞ!」
また光希は走り出す。
竹の間から蔦が無数にぶら下がっている。跳躍しながら、くぐり、速度は先程と同じものを保ったまま駆け抜ける。
「ひえぇ、きつっ!」
「ほらほら、頑張れ!」
「あぶっ、うぉっ!」
「あはは!引っかかんなよー!」
避けながら走るのは大変で、善逸は悲鳴を上げたが、光希は楽しそうにしている。
「見えた!」
冨岡邸の裏側に出たようだ。
「よし!このまま庭まで競争だ!」
「平面なら負けるかよっ!」
二人は屋敷に向かって走り出す。
善逸が足に力を込め、矢のように走る。ぎょぇっと声を出して光希が追う。
善逸はまたたく間に塀を飛び越えて庭に着地する。
すぐ後に遅れて光希が庭に飛び込む。
「くそー!速えー!!はー、はー、」
「はぁ、はぁ、へへっ」
庭に転がる二人。
「あら?光希ちゃん、善逸くん?」
千代が物音を聞きつけて庭に来た。
「あ、母ちゃん、ただいま」
「おはようございます、お邪魔します」
「……全くもう、二人とも。門から入ってらっしゃいな」
ぜーぜーと言いながら頭や身体にあちこち竹の葉をつけた子ども二人を見て、千代は優しく笑った。