第24章 雷の呼吸
翌朝、善逸が目を覚ますと隣に光希は居なかった。
目を擦って伸びをする。
ほとんど使われてない善逸の布団はもう畳まれていた。
障子を開けると、空は曇っている。今日は雨かな、と空を見上げる。
家の中には光希の動く音がしている。
宿屋の朝は早かったので、光希はいまだにどんなに眠くても朝早くに起きてしまう。しょっちゅう寝坊していた善逸は、とっくにその習慣は抜けている。
善逸が起きられなかった時は、光希は二倍働いて彼が怒られないようフォローしていた。
自分と善逸を守るために、必死で早起きしていた光希。
……もう、そんなに早起きしなくていいのに。ここには俺たちをひっぱたく大人はもう居ないんだよ
そう思うと、少し切なくなった。
善逸は顔を洗って身支度を整える。
台所に行くと光希は料理をしながら何やら考え事をしていた。
「おい!火、大丈夫か?」
「あ!危なっ」
「もう、怖っ!気をつけてよ」
「あはは。ごめん、考え事してたから」
「あははじゃねえよ!これだから光希焼きは恐ろしいんだよ……」
善逸が青ざめる。
卵焼の黒焦げと火災による家屋消失は、なんとか阻止した。
「おはよう、善逸」
「おはよう、光希」
善逸は光希を抱きしめて口付けをする。
「早いな。ちゃんと寝た?」
「すっごい寝た」
「ならいいけど。もっとゆっくりしていいんだよ?」
「……旦那様より後に起きられませんよ」
光希が善逸の腕の中で可愛らしく言う。
善逸の胸がトクンと跳ねる。
「なに光希、……朝から誘ってんの?」
「いいえ?」
「この家の旦那様は、そういうの気にしないらしいよ?」
「優しい旦那様なのね」
「そう。おまけに男前」
「あら、最高の旦那様ですね」
光希はクスクス笑って善逸の腕からするりと抜け出す。
「奥様は、幸せ者ですね」
首を少し傾けてはにかみながらそう言う光希に、善逸は悶え死にそうになった。