第23章 隠れ家 3
それぞれ布団に入る。
善逸も光希も身体に疲れがのしかかる。仕事の疲れと……
「光希……」
「……なに?」
「身体、大丈夫?」
「うん。もう痛くないよ」
「ね、そっちの布団にいっていい?」
「…………」
「なんもしねえって」
「いーよ」
風呂のこともあったため、光希は了承した。
じりじりと布団の中で横移動をして、善逸が入れる場所をあける。
「へへっ」
善逸が子どもみたいな笑顔を浮かべて光希の布団に入り込んでくる。
「あー、幸せ」
善逸は、そう言って布団の中で光希をきゅっと抱きしめる。少し戸惑ったが、心底幸せそうな顔をする善逸に光希の顔もほころぶ。
「隠れ家で、初めて一緒に寝るんだね」
「そうだな」
「ふふ。私も、幸せ」
光希も嬉しそうに善逸にすり寄る。その可愛らしさに、善逸の胸がキュンとなる。
「なんか、寝るのがもったないないなー」
「これからまた何度も寝られるよ」
「でも初めての夜は一度きりだろ」
「まあ、ね」
初めての夜、なんて言葉を出してしまった為、二人は顔を赤くする。本来ならこの時間から事に及ぶのだろうが、若い二人は真っ昼間に終えてしまった。
「……早く、光希と結婚したいな」
「ん?どして?」
「俺のものだって、証明になるじゃん」
「そんなの要る?」
「他の男が近寄らなくなる」
「何?何か心配してるの?」
「光希が可愛すぎて、心配なの」
善逸は首元に顔を寄せている光希に合わせるように顔を下げ、口付けをする。
「絶対、誰にもやらない」
善逸のギラギラした目が光希に向けられる。
「結婚してなくても、私は善逸のものだよ」
光希は上目遣いでその目を見る。
「だって今日、……全部あなたに貰ってもらったじゃない」
そんなことを言って笑うから、善逸の顔は茹で蛸のように赤く染まり、布団の中でもだえた。
「ひぃー!可愛すぎるっ!もう何なの!可愛すぎて死ぬ!死ぬわ俺!朝まで生きてねえわ!」
「死に顔は笑顔だね」
「極上の、な!」
そんなことを話しながら、二人はいつの間にか寝ていた。疲れも手助けして、ぐっすりと深い眠りにつくことができた。