第23章 隠れ家 3
先に風呂に入った善逸は、光希が風呂から上がって部屋に入ってきても、頬杖をついてわかりやすくムスッとしている。
光希は髪を拭きながら、やれやれと溜息をつく。
首に手ぬぐいをかけ、包から包帯と傷薬を出す。任務で負傷した傷の手当を始める。
傷の様子を見ていると、不機嫌ながらも善逸がそばにきた。
「ん?」
「……腕、見せて」
「はい」
「………」
腕を出すと善逸はその腕をとり、怪我を見る。
入浴で血流が良くなったからなのか、少し血が滲んでいる。
善逸は無言で傷薬を塗ってくれた。
「いつまで拗ねてんの?」
「…………」
「髪の毛濡れたまんま」
「…………」
「頭皮に悪いよ。ハゲるよ」
「…………」
包帯を巻いてくれている間、光希は善逸に話しかける。
だが、まだまだ不機嫌なようで返事がない。
「無視は無しだよ、善逸くん」
「…………」
善逸は口を尖らせながら、話し始める。
「……お風呂、一緒に入りたかった」
「そうね」
「何で?何で駄目なの?」
「言ったでしょ。一緒に入って、善逸が我慢できるとは思えないって」
「我慢、出来るよ!ちゃんと、出来るのに。なのに、回し蹴りされた……」
「それは、ごめん。全面的に謝ります。つい」
「つい、で出るか?あんな鋭いやつ」
「咄嗟に出るのは、得意な技みたい。ごめんね」
一緒に入ると駄々をこねまくる善逸は、苛ついた光希に蹴り飛ばされていた。油断していたのでモロにくらい、怒っていた。
「あとね……、私、一人でお風呂に入るのが好きなの」
「…………」
「疲れを極限まで癒やしたくて。お風呂の時間大切にしてるの。だから、断っちゃった。ごめんね、善逸」
「わかったよ。……でもさ、俺は、光希とお風呂入りたいから、たまには一緒に入ってよ」
「……わかった」
善逸の機嫌が少し治ったようでホッとした。
置かれている布団を二組並べて敷く。