第23章 隠れ家 3
「……はぁ、笑った笑った。一年分くらい笑ったわ」
食べ終わった後、光希は片付けをしながら、まだ口元に笑みを浮かべている。
「いいのか?」
「うん。洗い物はやるよ。作ってもらったし。善逸はお茶飲んでゆっくりしてて」
光希は手際良く食器や鍋を洗っていく。
鼻歌交じりでご機嫌である。
「今日、どうする?」
「善逸は?」
「ここで寝るよ」
「んー……」
「明日、仕事?」
「今のところ、ないけど」
「じゃ、一緒に寝ようよ」
後ろから善逸が抱き着いてくる。
洗いにくくなったが、もうすぐ終わるため払いのけることはしなかった。
「うーん……」
「何?何で悩むのさ。一択でしょ」
なかなか泊まると言わない光希。
洗い物を終えて、手ぬぐいで手を拭く。
「……泊まったとして、」
「……? うん」
「私、……もう一回、…出来るかわかんない、よ?」
頬を赤らめて俯く光希。
光希の心配していることがわかって、善逸の胸もドキッと跳ねる。
「そ、そんなことしないっ!身体痛いのわかってるよ!」
「でっ、でも、善逸は、その……絶対に、したくなるでしょっ!我慢させるのも悪いし……」
「うっ…大丈夫だよっ!……タブン」
「今、小さくたぶんって言ったでしょ!」
「絶対って言いたかったけど、言えなかったの!俺、わりと正直者だから!」
善逸は光希を抱きしめたまま目をぎゅっと瞑る。
「お願い……泊まってって。 布団、別でいいから。隣に居て。帰らないで。ね?」
そう言って、切ない声で懇願する善逸。
「わかった。泊まってくよ」
悩みながらも、今度は光希が折れる。
善逸が閉じていた目を開ける。
「本当?」
「本当。」
「朝まで居てくれる?」
「うん。……タブン」
「聞こえてるぞ」
「ふふっ」
善逸は光希を自分の方に向けさせて、嬉しそうに口付けをした。