第23章 隠れ家 3
「よし、出来たっ。うん、うまっ」
味見をした善逸が、満足そうに言う。
「よっ、凄いね!大将!!」
「ははは、儂の弟子はこの国に八千人居るからな!!」
「あはははは!!弟子、増えてる!昔は五千人だったのに!」
「はっはっは!儂は凄い料理人だからだ!」
ふざけあいながら、光希は机を拭いて夕餉の用意をする。
今回は一品だけなので、大きめの器と箸を出す。笑いすぎて目に涙を浮かべている光希。
「鍋や食器も買ってくれたんだね。食材も」
「そうよ。もう俺の財布はすっからかんよ」
「嘘でーす、この人高給取りでーす」
「そんなことないですー。薄給の中、命削ってるんですー」
光希が器を持って善逸のところに行くと、笑顔で受け取ってよそってくれる。二つの器から湯気が立ち上がる。
「貧乏だから、これだけ」
「兄ちゃん、ひもじいなぁ……」
「ごめんな……、光希。俺が不甲斐ないばっかりに……うっ…」
「兄ちゃんが…女に借金負わされたからな……」
「そうだな俺が……って、おいっ!笑えねえわ!」
「あははははは!」
「爆笑かよっ!」
久しぶりの善逸の手料理に、嬉しさ全開の光希。笑いが止まらない。
「善逸、ありがとう!いただきます!」
二人は手を合わせて、食べ始めた。
「おいしい……!」
「良かった」
善逸がホッとした顔を見せる。
「美味いよ、兄ちゃん……!衝撃の旨さだ」
「ははは、まだ続くのかよ」
「美味しいなー、善鍋最高だよー」
「お代わりあるからな、ってお前がお代わりしたの見た事ねえわ」
「大将は、そこも見越して作っておられますよね。余った所も見たことがありません!」
「うむ、当たり前だ。お主の食事量くらい心得ておる!作る量を間違えるはずなかろう!」
ゲラゲラと笑いながらご飯を食べる二人。
それは蝶屋敷でも冨岡邸でも見せたことのない姿だった。
恋人というより、やはり兄弟感が強い二人ではあるが、どんな高級料理より美味しいご飯を食べて、心から安心できる世界でひたすら癒やされた。