第23章 隠れ家 3
善逸の姿が見えないので、部屋を出る。
台所から善逸の気配がする。見に行くと、善逸は何やら料理をしていた。
「あ、光希。起きたのか」
「うん。ごめん、寝ちゃった」
「いいよ。身体、大丈夫?」
「う、うん」
「そっか。よかった」
「…………」
「…………」
……は、恥ずかしっ!
初夜の翌朝のような独特の気恥ずかしい雰囲気に、二人して顔を赤くして俯く。
光希は恥ずかしさをどうにかしようと周囲に目線を向ける。
台所はかなり掃除されていて綺麗になっていた。
少しではあるが食器も置かれている。
「ここも掃除してくれたんだね。ありがと」
「あ、ああ……うん。台所と風呂と厠、あと、あの部屋をとりあえずな。生活出来なきゃと思って」
「ありがとう」
「どういたしまして」
「何作ってるの?」
「適当に食材突っ込んで煮込んでる」
「ああ、善鍋?」
「ははは。懐かしいな、それ」
光希がぴょこんと側に寄ってきて、善逸の手元を楽しそうに覗き込む。
鍋の中で食材がくつくつと煮えている。
にこにこと鍋を見つめる光希の髪は降ろされたままで、動きやすいように短めに部屋着を着付けているので幼く見えて可愛らしい。
「美味しいかわかんないからな」
「大丈夫でしょ。善鍋の成功率は光希焼より高かった!」
「そりゃ、お前がいつも火にかけたままどっか行ったりして焦がしてたからだろ」
「あはははは」
「笑ってごまかすなよっ!火事になるだろ」
光希は笑いながらくるりと身を翻す。
台所に置かれた椅子に腰掛ける。
宿屋で余った料理があればそれを貰って食べていたが、ないときは離れで適当に料理を作っていた二人。
昔を思い出す。