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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第22章 隠れ家 2 ※


しばらく羽織の上から光希の背中を擦っていた善逸が、優しく話しかける。

「なあ、光希」

「……ふぅ、ふぅ、…はぁ、」
「今日は……もういいよ。ごめんな。怖いよな、辛い、よな」


「ちがっ……ちょ、と、待って……」
「無理しないで」

「無、理じゃな……、ケホッ、はぁ、はぁ、……」
「俺は待つからさ。な」


「………はぁ、はぁ、違うっ!!」


その瞬間、光希は善逸から少し身体を離し、手を布団に置いて前屈みになる。ギリッと布団を掴む。

光希の変化に驚く善逸。光希から戦闘時さながらの戦いの音がする。


「……えっ」
「ぜぇ、ぜぇ、これは、乗り越えなきゃ、いけないんだっ!ぐっ、はぁ、はぁ、……っ、」

「お、おい、光希」


「俺は、剣士だっ!!あんな糞野郎に、負けてたまるかああ!!」

瞑っていた目をしっかり開き、布団を握る自分の手を見る。


「逃げんな!逃げてても、何も始まらない!違うか!逃げるな、立ち向かえっ!」


自分に言い聞かせるように必死に叫んでいる。光希の目からは大粒の涙がこぼれている。

光希のその姿を見て、善逸の目にも涙が込み上げる。


「落ちつけ、大丈夫だ、大丈夫だ。目の前にいるのは、お前の愛しい人だ。あいつじゃない。大丈夫、大丈夫だ。ふぅ、はー……落ち着け、大丈夫だ」

光希は大丈夫と繰り返しながら布団から手を離し、羽織を胸の前で合わせ、震える両手で掴む。


「ふぅ、ふぅ、はー……はー………。ごめんね、善逸。取り乱して」


善逸は涙を流したままぶんぶんと首を横に振る。
光希は呼吸を整えていく。


「お水、持ってきてくれる?」

幾分落ち着いた声でそう言うと、善逸は「ああ」と応えてパタパタと部屋を出ていく。



……やっぱり、こうなったか。最悪だ


光希は『この時』を想定して、ちゃんと落ち着けるように考えてきていたのだが、見事に取り乱した。そして最終手段の鼓舞を使うしかなかった。



……善逸、どん引いただろうな。初の同衾がこれかよ、もうなんつーか散々だよ。糞野郎とか言わなかったか?言ったよな?



震えは落ち着いたが、光希は至極どんよりとした。

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