第21章 隠れ家 1
善逸は光希の腕の中で、寂しそうな顔をしている。
「ごめんね。善逸。屋敷に戻って、刀振っときたいの。多分今夜から任務だろうから」
「俺も、指令くるだろうな……やだな……」
「いつ戻れるかわかんないけど、絶対帰ってくるから」
「うん」
「善逸も、ちゃんと帰ってきてね」
「わかった」
おにぎりの包をまとめて懐にしまう。
「じゃ、またね」
「またね、じゃないだろ」
「ん?」
「ここは俺たちの家だろ?」
「……そっか。そうだね」
光希は玄関まで見送りにきた善逸にちゅっと口付けをして、「いってきます」と笑った。
善逸も「いってらっしゃい」と見送る。
婚約者、という設定を守っているのか、ちゃんと歩いていく光希。しばらく行ってから人目を確認して走り出すのが聞こえた。
善逸は蝶屋敷に戻るまで、家の掃除をした。
『俺たちの家』……
自分で言っといて夢みたいだ、と思う。
捨て子の善逸は家や家族にというものに憧れていた。
借りているとはいえ、自分の家ができ、そこに大事な人が来てくれる。
胸が熱くなるのを感じながら掃除をしていると、チュン太郎が来て善逸は膝から崩れ落ちた。