第21章 隠れ家 1
善逸が話し終わって戻ってくると、光希は机に向かっていた。
「何書いてんだ?」
「要るものを書き出してるの」
光希は生活に必要なもののリストを作っていた。
「布団二組……え、一組でいいじゃん」
善逸がくっつきながらそう言ってくる。
「駄目、二組」
「なんでだよー!一緒に寝ようよ!」
「喧嘩した時どうすんの」
「仲直りする!」
「……二組、です」
「えー?要るー?」
「あーもう、ちょっと離れてよっ!書けないでしょ!」
「幸せだなー幸せだなー」
「部屋の中で転がらないのっ!埃がたつでしょ。はぁ、もう、これ食べてなさい!」
光希はおにぎりを渡す。
「母ちゃんのおにぎり?」
「そう。ニ個どうぞ」
善逸は縁側に出ておにぎりを食べ始めた。
「うまっ」
「でしょ」
光希は、ええと……とぶつぶつ言いながら書いていく。午前中の穏やかな光が部屋に差し込んでいる。
「俺、次の任務で死ぬのかも」
「……何で?」
「幸せすぎて、さ」
「幸せなら帰ってこれるよ。帰りたいって思えば死なないよ」
「うん」
光希も縁側に出てきて、お握りを一つ食べる。
「これ書き終わったら私、戻るね」
「えー……」
「義勇さん見送らなきゃ」
「…………」
「お礼も言わないと」
「……うん」
紙を見ながら二人で話す。
「だいたいこんな感じかな。どう?」
「そうだなぁ」
「まずは掃除道具だね」
「箒、雑巾、桶……」
「那田蜘蛛山みたいに蜘蛛がいる」
「おー、討伐してやるぜ」
「あ、そうそう。ちゃんと光希は俺の婚約者ってことになってるから。出入りするとき何か言われたらそう言って。歳は十八な」
「わかった」
「俺は十九だから」
「え、見えないっしょ」
「お前の十八の方が見えねえわ。まず女に見えるのかっつー話だよな」
二人とも少し年齢をサバ読むようだ。
仕事は二人とも同じで、出稼ぎが多くあまり家に居ないなど、齟齬がでないよう設定を話し合った。
「よし、わかった。じゃ、私行くね」
「……もう?」
善逸が手を伸ばして幼子のように抱きついてくる。胸元にくっついてくる善逸をよしよしと撫でる。